西東京市多文化共生センター

┌-------------------┐
  NIMIC通信 No.135(2017年11月号)
└-------------------┘



┏┏ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏ [9] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(129)
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第129回目の今回は、中国出身の作家楊逸(ヤン・イー)の作品です。

『ワンちゃん』 楊逸著 文藝春秋 2008年 文学界新人賞受賞 芥川賞候補
『時が滲む朝』 楊逸著 文藝春秋 2008年 芥川賞受賞
    
 著者は1964年中国のハルビンに生まれました。
 1987年に留学生として来日し、お茶の水女子大を卒業後、在日中国人向けの新聞社などいくつかの仕事を経て中国語教師となり、現在は大学で教えています。
 その間に日本人と結婚して二児をもうけましたが離婚、その後日本語で小説を書き始めました。
 第1作が『ワンちゃん』、第3作が『時が滲む朝』で日本語を母語としない作家としては初めて芥川賞を受賞しました。
 著者が生まれ育った時代の中国は文化大革命のさなかで、人民服ばかりの色の無い世界。
 大学教授だった父は10年間農村に下放され、台湾に逃げた親戚とは音信不通になりました。
 大学生らを中心に中国全土に広がった民主化要求に対し1989年6月4日の天安門事件が起こりますが、著者は丁度その世代であり、大きなショックを受けました。
 『時が滲む朝』はこの天安門事件を取りあげ、この運動に関わった中国の若者たちを描いています。
 また、中国の戦前から現在までを見れば、共産主義の社会になり、文化大革命が起き、その後の急速な近代化があり、一人っ子政策があり、社会の仕組みや規範、人々の生活やものの考え方まで、目まぐるしく変化しています。
 その中で必死に生きている女性を描いたのが『ワンちゃん』で、日本の農村風景もリアルに描かれています。
 一緒に収録されている『老処女』との二作は読んでいて、胸が痛みます。
 賞の選考委員の講評にもありますが、楊逸さんの本には描きたい内容があふれ出しており、日本語の技術の不足を補って余りあるということです。
 2014年出版の『あなたへの歌』は国際結婚のカップルを題材にしているそうで、これも面白そうです。 
                        (NIMIC会員 根本百合)

 
 
 前号の本の紹介文に移る | 書籍の一覧に戻る |  次号の本の紹介文に移る

HOME  |  ABOUTUS  |  ACTIVITIES  |  VOLUNTEER  |  CONTACT  |LINKS

NPO法人 西東京市多文化共生センター     Copyright (C) 2011 NIMIC All Rights Reserved.