西東京市多文化共生センター

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   NIMIC通信 No.145(2018年10月号)
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┏ [13] キーワードを読む
「多文化共生」について理解を深めるために(139)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。
 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の 紹介を始めました。第139回目の今回は、国連機関で働く日本人の中満泉 さんが日本のティーンエイジャーに向けて書いた本ですが、大人が読めば 感激すること間違いありません。


危機の現場に立つ   中満 泉著 2017年7月 講談社


 著者は、大学3年の時交換留学プログラムに参加してアメリカで1年間を 過ごし、大学卒業後アメリカの大学院へ進学、国連難民高等弁務官事務所 に就職し、初任地はトルコでした。
そこで、第一次湾岸戦争とクルド難民危機への対応に奔走、次に深くかかわったのが 旧ユーゴスロバキア紛争です。
 現場ではいくつもの国連機関、民間NGO、国連維持軍、多国籍軍、当事国 の政府軍や警察など、全く考え方の違う組織が活動するため、調整が大変 に重要となります。
 息詰まる現場のやり取りが淡々と描かれ、それが職場の 日常であることがよくわかります。
 その後も国連の様々な機関で仕事をする 中で、カンボジア、ソマリア、東ティモール、ルワンダ、ザイール、アフガニス タン、シリアと世界中の紛争地で、難民支援の仕事を様々な形で続けて きました。
 2015年の国連難民高等弁務官事務所の統計によると、迫害や紛争を逃 れるために国境を越えて難民となっている人が2130万人、国内避難民が 4000万人で、避難の平均期間は17年。
 国境を超えた避難民の約90%は近隣の開発途上国に受け入れられています。
 難民支援の仕事は限りなく続きそうです。
「私たちの仕事では、時に人間の最も恐ろしく汚く罪深いとこ ろを見せつけられることもしばしばあります。 今日の日本では想像するのが難しいかもしれませんが、 世界の多くの場所で、『平和』というものは苦労してつくり出し大切に守らなくてはならないものであって、自然と存在するものでは ないのです。」(結びにかえて)
 著者によると仕事をするために大切なことは次の3点、(1)「モラル・コンパス」 ・・・価値観・行動規範がぶれないこと、(2)冷静さ、(3)スキル(語学など)だそうで す。
 そして、これらを駆使して活躍する著者の持つしなやかなバイタリティーが、 この本の魅力です。私がこれまで持っていた国連機関のイメージは、寄付の 呼びかけが多いけど行っている仕事内容はイマイチよくわからないというもの でした。
 この本を読むと、実によく国連の様々な機関の仕事内容が見えてきま すし、「文民の人道支援」と言う言葉の意味がよくわかりました。
 著者はこの激務をこなしつつ、スウェーデン外交官の男性と結婚して、二人の娘を育てる お母さんでもあります。スウェーデン、日本とアメリカ等の比較もおもしろいです。                    (NIMIC会員 根本百合)




 
 
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