西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.78(2012年11月)
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┏ [9] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(72)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第73回目の今回は、戦後の日本のポピュラー音楽を分析したアメリカ人の本をご紹介します。

『さよならアメリカ、さよならニッポン― 戦後、日本人はどのようにして独自のポピュラー音楽を成立させたか ―』
マイケル・ボーダッシュ著 奥田祐士訳 
    白夜書房 2012年7月 ¥2,800

 著者は1961年アメリカ生まれ、現在はシカゴ大学の東アジア言語・文明学部の准教授であり、夏目漱石などの日本近代文学が専門だそうです。
 1984年に宮城教育大学に留学して日本のポピュラー音楽に出会い1997年から書き溜めた論文をもとに1冊にまとめ、「アメリカの人々にもJポップを楽しんでほしい」とアメリカで出版しました。内容は、いくつかのもの を重点的に取り上げて掘り下げてあります。占領下の日本では笠置シヅ子と黒澤明、続いて美空ひばり、坂本九、グループ・サウンズ、ニューミュージックの荒 井由美やYMO、その後のアジアポップスとの関係など。書名は、日本のバンド「はっぴいえんど(細野晴臣や松本隆ら4名)」のラスト・シングル(‘73) のタイトルから取られています。
 とにかく、資料で裏付けながら緻密に分析していく研究書(300ページ超!)の翻訳であり、『菊と刀』を思い起こす読みにくさもありますが、なんとも面 白い本です。私が聞いては口ずさみながら生きてきた歌の数々や映画、TVドラマが登場するので、この本とともに幼少期から今までの人生を思い返してしまいました。この本を読んでミュージシャンの系譜がわかり、「えっ、そうなの、ホント?!」と思うことばかりでした。
 何より驚いたのは、専門ではなく趣味の音楽をここまで緻密に分析してしまうこの著者です。日本人の多くは音楽や美術を情緒面でとらえ、なんとなく好き嫌いや良し悪しを言い、選んでいるのではないでしょうか?
異文化で育った方が日本を深く知るなかで、私たちには思いもかけない事物に光を当てたり、分析したりするという、面白い時代になりつつあるなと感じました。
   (NIMIC会員 根本 百合)


 
 
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