西東京市多文化共生センター
┌-------------------┐
     NIMIC通信 No.99(2014年9月号)
└-------------------┘


┏┏┏ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏ [6] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(93)
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる
本の紹介を始めました。
第93回目の今回は、今話題の写真集です。

「キルギスの誘拐結婚」 林 典子著 
日経ナショナルジオグラフィック社 2014年6月

 著者はフォトジャーナリストで、米ワシントン・ポスト紙、独デア・シュピーゲル誌、仏ル・モンド紙など国内外の様々なメディアで作品を発表しています。
〈解説文から〉・・・・・・キルギスは中央アジアの山地に位置する国で、広さは日本の約半分、主な産業は農牧畜業、鉱業です。人口540万人の7割を占めるクルグズ人(大半がイスラム教徒)の3割が誘拐により結婚していると推定されています。
 その「アラ・カチュー(誘拐結婚)」とは、仲間を連れた若い男が嫌がる女性を無理やり家に連れて行き、一族総出で説得して結婚させるもの。誘拐された女性が拒否しつづければ実家に帰さなければならないという「暗黙のルール」がありますが、純潔を大切にするイスラムの慣習などから、女性たちの8割が最終的に結婚を受け入れるといいます。現在は違法なのですが警察や裁判官も「親族間のもめごと」とし、犯罪として扱うことは殆どないそうです。
 なぜ誘拐結婚はなくならないのか、結婚を受け入れた女性たちはどういう心境なのか、結婚後どんな日常を過ごしているのか。
 それを知りたくて、著者は2012年7月から5か月間キルギスに滞在、その後も追加取材を続けています。
 著者が考え続けているのは、この結婚様式は女性の人権侵害なのか、キルギスの文化の一つなのかどちらだろうかということ。
 誘拐結婚後幸せに暮らしている女性たちも多いこと、兄弟間でも誘拐結婚と恋愛結婚が入り混じっていることなどをみると外国人が一方的に否定するべきものではないともいえますが、うまくいかず離婚した女性、自殺に追い込まれた女性もいます。
 昔は親の決めた見合い結婚が普通であり、誘拐結婚は恋愛結婚するために若い二人が行う駆け落ち婚の意味を持っていたそうです。
 しかし、社会状況が大きく変化、遊牧生活から定住生活へ、男女平等の思想も広まり、女性も教育を受けて進学し未来の夢を持つようになりました。町で男性が一方的に見染めた女性を自動車に押し込めて誘拐し、遠方の村へ連れて行くような最近の強引なアラ・カチューには批判的なキルギス人も多いといいます。

写真集の女性たちを見ると、18歳の憂い顔、泣きそうな顔、幸せにとろけている顔も、たくましい母の顔もあります。どの顔も日本人より遥かにたくましく、自分で未来を切り開いていく感じがするのですが、いかがでしょうか。   (NIMIC会員 根本 百合)


 
 
 前号の本の紹介文に移る | 書籍の一覧に戻る | 次号の本の紹介文に移る

HOME  |  ABOUTUS  |  ACTIVITIES  |  VOLUNTEER  |  CONTACT  |LINKS

NPO法人 西東京市多文化共生センター     Copyright (C) 2011 NIMIC All Rights Reserved.