西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.13(2007年5月)
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┏ [8] キーワードを読む~「多文化共生」について理解を深めるために⑨
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 NIMIC設立の理念の中で大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。9回目の今回は、漢字を中心に据え、日本語の成立に見る多文化性に関する本を複数ご紹介します。

「漢字」に関して私の読んだ本の中から
 言葉と文化はどう関係するのか、興味の尽きない問題である。日本語が日本文化を作るのか、日本文化が日本語を作り上げるのか・・・。両者は密接に関係することは間違いない。20代のころ海外に長期に滞在し、いまで言う異文化ショックを強く経験したものとして、日本人あるいは日本文化の源泉や特色を何に求めるかは、いつも頭の中にあった。ふと或る時から、その柱の一つが「日本語における漢字」の問題にあるのではないかと考えるに至った。日本語表記における「漢字かな混じり文」の存在である。
 そもそも、一国の言葉の語彙の6割以上が外国の言葉である漢語からなっているような国が他にあるだろうか。中国の文章すなわち漢文をそのまま日本語で読み下せるというような二つの言語の関係が他にあるのだろうか。やがてその鍵は日本語の成立の事情にあることを知った。
 古代、東アジアの小島国である倭国が狭い海を隔てて、強大な先進文明国である中国の東端に位置し、しかもすぐ北側には大陸とつながる朝鮮半島の諸国が小船でも行き来できる距離にある。しかもその小国には、「話し言葉」はあっても「書き言葉」がない。書き言葉の生成は、原材料は中国、加工のノウハウは多分朝鮮半島から多くを得て、数百年の苦闘の末、10世紀に出来上がった。つまり日本の言葉はその始まりから多国籍、多文化の性格を持ったのだ。日本文化はその源泉で、多文化の共生から始まったのだ・・・・というようなことを、いろいろ考えさせてくれた書物を、いくつか紹介させていただきます。

『漢字と日本人』 高島俊男著 文春新書  2001年刊  720円
漢字と日本人のかかわりを古代から現代に至るまで極めて平易にしかも正確に説いた格好の入門書と思います。そもそも「日本における漢字の問題を、日本に関心を持つ外国人に紹介するため」英文で書かれたものが、ベースになっている由です。

『二重言語国家・日本』 石川九楊著 NHKブックス 2006 (970円)
中国語である漢語と和語の二重言語を使用せざるを得ないことが、日本文化を特色付けると主張する著者(書家でもある)の独特の文化論です。

『古代東アジア世界と日本」 西嶋定生著 岩波現代文庫 2000 (1100円)
中国を覇権国とする古代東アジアで日本を含む漢字圏が成立して行った事情がわかります。

『倭国と渡来人』 田中文生著 吉川弘文社 歴史文化ライブラリ 2005 (1700円)
日本語が成立して行く過程で朝鮮半島の影響が予想外に強かった事情がわかる本です。
(NIMIC理事 斎藤勝)


 
 
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