西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.27(2008年7月)
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┏ [9] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(22)
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 NIMIC設立の理念の中で大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 22回目の今回は、振り仮名つきの児童書ですが、大人まで楽しめる一冊をご紹介します。
 
『いっぽんの鉛筆のむこうに』
 谷川俊太郎文 坂井信彦ほか写真 堀内誠一絵
(1989年2月   福音館書店   1300円)

 子どもに身近な「鉛筆」を通して、経済・社会のグローバル化を肌に感じさせてくれる内容です。
 スリランカの黒鉛鉱山で働くポディマハッタヤさん、アメリカ・カリフォルニア州のきこりランドレスさん、木材運搬のトラック運転手ゴンザレスさん、加工した木材を運ぶメキシコ船のコック長シップさん、荷揚げ作業の高橋さん、三菱鉛筆山形工場で働く大河原さん、文房具屋の佐藤さん・・・
一本の鉛筆が子どもたちの手に届くまでにかかわるおおぜいの人々の顔、仕事、家族や生活を具体的に紹介していくことで、外国の人々もぐっと身近になり、大切なパートナーとして感じられてくる、そんな温かさのある本です。
 文章は説明文ですが、簡潔で、音読するととてもなめらかで読みやすい。それもそのはず、詩人の谷川俊太郎さんが文章を書いており、端々まで行き届いた本です。
 昨年、日本語勉強中の小四少年に読んであげたところ、長いのによく聞いてくれました。その時は「ふ~ん」だけでしたが、一週間後、彼は「鉛筆、百円ショップで買ったよ」と筆箱いっぱいの鉛筆を持ってきました。それまではシャープペンシルをカシャカシャさせて、慣れない漢字をふにゃふにゃ書いていましたが、鉛筆で筆圧もかかり、たて線や角がぴしっと定まり、字が上手になったのはうれしいおまけでした。
 二人で一番盛り上がったのはきこりランドレスさんの食事、「たまご4つ、バナナ1本、ミルク2杯の朝食・・・
夕食にはビールを24缶のむ!」←―「うっそー」「写真見て!メタボじゃないよ」「何で死なないの?」「アメリカのたまごはちっさいの?」「まっさか」
・・・間違いなく、私たち二人は、現在の日本を共有しています。
(NIMIC会員 根本 百合)

 
 
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