西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.36(2009年4月)
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┏ [11] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(32)
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 NIMIC設立の理念の中で大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 32回目の今回ご紹介する本は、1967年米国生まれの詩人である作者が、小学館国語辞典編集部のホームページ「Web日本語」に3年半にわたって書いた文章を1冊にまとめたものです。

『日本語ぽこりぽこり』   2005年3月 1600円
   アーサー・ビナード著  小学館

 作者は大学の卒論で日本語に出会い、魅惑されて来日、日本語での詩作、翻訳、文筆を始めました。2001年詩集『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞、2005年本書で講談社エッセイ賞、2007年『ここが家だベンシャーンの第五福竜丸』(集英社)で日本絵本賞、2008年詩集『左右の安全』(集英社)で山本健吉文学賞を受賞しています。
 
 1990年に23歳で来日した当初は日本語学校へ通い、テレビや戸口を訪ねる宗教勧誘まであらゆるものから日本語を学習したそうです。
 習字・俳句・落語・古典・方言、実にさまざまなものに興味を持ち、日本語の造詣を深め、現在は日本語で詩作をし、俳句をひねり、絵本・エッセイを書き、英語の本を日本語へ、日本語の本を英語へ翻訳し、いくつもの雑誌や新聞に連載をもち、ラジオのパーソナリティーもつとめています。
 表題の「ぽこりぽこり」は夏目漱石の俳句の一節です。
 詩もエッセイも、透明感のあるやや硬質で、歯切れがよい文章です。
 日本の詩人にままあるような曖昧模糊としたところがありません。この作者は、言葉に対する感性がとても鋭敏で、気になるものは深く追求していきます。
 「・・・・・母語の英語だけでなく日本語をも得て、退屈することは皆無だ。」とあとがきにあります。彼の言葉や文化に対峙する姿勢に敬服するとともに、この本を読んであらためて日本語の持つ世界の広さ、奥行きの深さを思い、そこに住む私自身を幸せに感じています。 また、日本語が世界に受け入れられつつあると同時に、日本語による創作や評論が、日本で生まれ育った人間だけのものではなくなりつつあることも実感させられました。
 エッセイ『空からやってきた魚』(草思社)もおなじく面白いです。
  (NIMIC会員 根本 百合)



 
 
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