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NIMIC通信 No.43(2009年11月)
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┏ [11] キーワードを読む
「多文化共生」について理解を深めるために(38)
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NIMIC設立の理念の中で大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
38回目の今回は、広島の原爆について書かれた児童書をご紹介します。児童書に分類されていますが、5〜6年生以上大人まで、充分に読み応えのある本です。さまざまな国から来た外国の人々に、原爆について説明する時にも大変役に立つ1冊ですので、書店や図書館で手にとってごらんください。
『絵で読む 広島の原爆』 文:那須正幹 絵:西村繁男
福音館書店 1995年出版 2500円
戦争や原爆を子どもたちに伝えるために書かれた本はたくさんありますが、実際に体験した人が悲惨さを叙情的に訴えるものが多かったように思います。
しかし戦後64年が過ぎ、語り伝える側の教師、親そして祖父母までが戦争を体験していない人ばかりとなり、後世に語り伝えることが難しい時代になりつつあります。そんな中で登場したこの本は、一見知識の絵本のような手法をとりながら、「原爆とは一体どんなものであったのか」「アメリカにおける開発の経緯」「その時広島にはどんな人々がどんな暮らしをしていたのか」「広島上空で原爆が爆発して何がどうなったのか」などを、資料をもとに具体的にわかりやすく説明しています。
こう書くと単なる資料集のように聞こえるかもしれません。ところが、広島の町並みを描いた詳細な2枚の絵・・・1枚は原爆投下前、木造の日本家屋が密集するなつかしい街の風景、もう1枚は原爆投下直後の同じ街並み・・・この2枚の絵の対比と冷静に記述された事実が、形容詞を連ねた叙情的な文章などよりもはるかに強く、悲惨さを伝えてくるのです。
作者の那須さんは「ズッコケ三人組シリーズ」でおなじみの児童文学者、広島生まれで3歳の時に被爆し、現在も広島に暮らし続けている方です。
原爆を知らない外国の方に説明する時、私はいつもこの本を使いますが、言いたいことをきちんとそして要領よく伝えてくれます。より詳しく知りたい人には、最後についている資料一覧も便利です。日本語ボランティアにかかわる方は、ぜひ手元に1冊お備えになることをお勧めします。
(NIMIC会員 根本 百合)
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