西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.49(2010年5月)
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┏ [9] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(44)
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 NIMIC設立の理念の中で大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 44回目の今回は、北極圏の暮らしを紹介するノンフィクションで、食べ物の話がたくさんでてきます。難しい字には振り仮名がついており、児童書に分類されていますが、大人にも充分読み応えのある内容です。児童だけに読ませておくのは余りにももったいない、面白い本です。

『地球最北に生きる日本人—イヌイット大島育雄との旅—』
      武田剛著  フレーベル館  2009年12月出版 1600円

 作者は朝日新聞の記者&カメラマンです。地球温暖化の取材でグリーンランドを担当し、『エスキモーになった日本人』(1989年文芸春秋刊)の著者である大島育雄さんが現在もグリーンランドに住んでいることを知り、3週間の取材旅行に訪れました。
 グリーンランド北部にあるシオラパルクは、50ほどの建物が並び、約80人が住む地球最北の村です。大島さんとともに3週間を過ごす中で、昔ながらのイヌイットの狩猟生活を体験すると同時に、海が凍らない・犬ぞりが使えないなどの気候異変の事実を体感して帰国し、この本をまとめました。
 ここに登場する大島さんは登山の事前調査のためにグリーンランドへ行き、犬ぞりや狩猟のやり方を村人に教えてもらいましたが、なんとそのままイヌイット猟師となりイヌイットの女性と結婚してしまった方で、5人の子どもを育て現在は孫も5人います。二つの文化の橋渡しなどという生易しいものではなく、正真正銘のイヌイット猟師になってしまった大島さんの姿に、「こんな国境の越え方もあるんだ」と感嘆してしまいました。
 写真を見ると、イヌイットの人々は顔立ちが日本人と実によく似ていて、人種が同じとはこういうことかと納得します。また、ここに描かれているのはシオラパルクの2006年5月の生活・・・インターネットも通じ、諸々の電化製品もある家に住みつつ、狩猟生活を営んでいるのです。
 
 この著者は極限の地を取材するのが好きなようです。第45次南極観測隊に参加した記録も本にまとめられており、こちらもおもしろいです。

 『南極—国境のない大陸—』
   武田剛著 朝日新聞社 2005年 1905円 一般書
 
     (NIMIC会員 根本 百合)



 
 
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