西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.103(2015年1月号)
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┏ [8] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(97)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第97回目の今回は、世界の子育てを比較した本です。

「こんなにちがう! 世界の子育て」メイリン・ホプグッド著
          野口深雪訳 中央公論新社 2014年9月
 
 アメリカ人のジャーナリストであった著者は、夫とともにアルゼンチンで暮していた時に出産し子育て生活に入りました。
 ところが、様々な点でアメリカとアルゼンチンの子育ての違いを実感し、自身が良き親となる事をめざして世界中の子育て事情を調べたことで、この本が生まれました。
 赤ちゃんの睡眠について、食べ物について、移動手段(ベビーカーやおんぶ等)、トイレトレーニング、けんか、家族のあり方等、テーマごとに章を設けてあります。
 内容は、次の二つの方法で書かれています。
 一つには、インターネットを駆使して情報を集め、文化と子育てに関わる研究や本を探し、著者や専門家に質問して意見を聞くこと。
 もう一つは、その文化の中で子育てをしている人々に実際の体験を聞くこと。
 後者については、台湾で生まれて養子縁組によりアメリカ人家庭で育ったという著者の世界中に広がる親戚や、多くの友人たち(アメリカへ移民してきたが出身国の文化や生活習慣を色濃く残している人々)の話などです。
 その範囲は、北はイヌイットから アフリカ、アジア、中東、南米にまで及びます。
 著者の感想をまとめると、大体以下のように思いました。
 〈世界中でびっくりするような様々な子育てがあるが、良く見れば気候風土や社会状況にあわせて理にかなっており、子どもたちはそれなりに元気に育っている。家族のあり方や子育てに、どうあるべきなどというものは無い。でも、女性が仕事を持つというような社会の変化があるとはいえ、紙おむつや粉ミルク、ベビーカーなどが多くの国に出回り、独自な所が失われ、世界中同じような子育てになるのはもったいない。〉
 最後に、私の感想です。実はとても読みにくい本でありました。
 日本人読者に向けて書かれた本ならば、世界地図を見渡すような感覚で楽に読めたと思います。
 これはアメリカ人が英語で書いた本であるために、著者が持っているアメリカ人の子育てイメージがどこにも書かれていなかったからです。
 本を読み進む中で、世界中の子育てと同時に、それに反応する著者の言葉の中から現在のアメリカの子育て事情が透けて見えてきました。
 幼少期の添い寝やベビーキャリー(おんぶや抱っこひも等肌を合わす移動道具)の良さが見直されていたり、既製品のベビーフードから加工食品、ファーストフードへと移行して太り過ぎになる食生活への反省があること、移民が流入しつづけることで社会が常に変動していることなど。
 異文化体験がダブルになって、縦揺れと横揺れが同時に来るような疲労を覚えましたが面白い本でした。
      (NIMIC会員 根本 百合)


 
 
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