西東京市多文化共生センター

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    NIMIC通信 No.114(2015年12月号)
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┏ [11] キーワードを読む
     「多文化共生」について理解を深めるために(108)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。
 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第108回目の今回は、多文化都市を舞台にしたイギリスの児童書です。

「おいぼれミック」
  バリ・ライ作 岡本さゆり訳 あすなろ書房 2015年9月
    

 15歳の少年ハーヴェイの一家は5人家族です。引っ越しをしたのですが、隣人ミックは人種差別発言がポンポン飛び出す失礼で偏屈な老人でした。でも、ミックの飼い犬ネルソンと仲良くなったハーヴェイは・・・。
 とても温かい結末で気持ち良く終わる読みやすい児童書ですが、この本のキーポイントはハーヴェイの一家がインドからの移民でシク教徒であること。
 訳者のあとがきによると、舞台となるレスターは多文化都市として有名で、4年前にイギリスで初めて移民が人口の半数を超えたそうです(人口の30~40%がインド・パキスタン系)。
 隣人ミックは今や少数派の老白人で、ご近所が様々な移民社会に代わっていくことに戸惑っているのです。
 一方、ハーヴェイ達シク教徒というのは500年前にインドで生まれた宗教で、カースト制度を否定し、身分、職業、宗教を問わず人はみな平等であり、助け合って仲良くするという穏やかな考え方の人々だそうです。
 髪を伸ばしターバンを巻く習慣があります。
 インド本国ではパンジャブ州を中心に人口のわずか2%ですが、現在海外に住むインド人の3分の1がシク教徒だそうで、作者自身もレスターに住むシク教徒のインド移民二世です。
 この本のハーヴェイ一家の持つ雰囲気が、シク教徒の理念を体現しているようです。
 今、中東からの移民が押し寄せているヨーロッパは、確実に多民族社会に変わりつつあります。
 この本に描かれたレスターの町も、さらにさらに変化していくのでしょう。
 作者バリ・ライさんは30冊以上の著作があり、賞もいろいろ受賞しています。
   (NIMIC会員 根本 百合)
 
 
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