西東京市多文化共生センター

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  NIMIC通信 No.124(2016年11月号)
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┏ [11] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(118)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。
 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第118回目の今回は中国残留孤児の父を持つ作者のノンフィクション作品です。458ページと分厚いですが、大変読みやすい本ですので、ぜひ手に取ってみてください。

「あの戦争から遠く離れて ~私につながる歴史をたどる旅~」 
 城戸久枝著 情報センター出版局 2007年  文春文庫 2012年
     
 第1部は著者の父の実話です。
 終戦の時3歳であった父は混乱する満州で両親とはぐれてしまいますが、幸い子供のいない中国人に出会い、孫玉福として大切に育てられます。
 奨学金で高校を卒業し大学を受験しますが、書類に日本民族と記入したため何回受けても不合格。
 それは文化大革命がはじまり中国全土に広がっていく時期でした。
 未来も閉ざされ、身の危険も感じた彼は、当時国交のなかった日本へ帰還する道を探って、手を尽くします。
 幸いにも、シベリア抑留から無事帰還していた父を探し当て身元を確認することができ、1970年日本へ帰国し、城戸幹となりました。
 しかし、まだ残留孤児の帰還事業が始まる前です。
 国の支援が全く無いまま、働きながら夜間中学で日本語を勉強して就職し、結婚、3人の子供を育てました。
 第2部は城戸幹の次女久枝の話です。大学生の時に2年間中国の吉林大学へ留学して、中国語と中日関係史を学びました。
 日本へ帰国後も中国の親戚や友人と丁寧に付き合いを続けていた父のおかげで、中国で大勢の人々に温かく迎え入れられて、濃密な触れ合いも体験して帰国しました。
 そして直面したのは、日本へ帰国を果たしたが様々な困難へ直面している元残留孤児一世たちのこと。
 通訳などをしながら、出会った彼らの中国語で語られる思いや心のひだまで丁寧に記録していきます。
 さらに、満州国の軍に所属していた祖父の人生についても、日本側、中国側両方の資料を読みこなしながら探っていくのです。
 この本は、大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞、黒田清JCJ新人賞を受賞し、NHK土曜ドラマ「遥かなる絆」(2009年)の原作にもなりました。

          (NIMIC会員 根本百合) 

 
 
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