西東京市多文化共生センター

┌-------------------┐
  NIMIC通信 No.141(2018年5月号)
└-------------------┘


┏┏ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏ [10] キーワードを読む
     「多文化共生」について理解を深めるために(135)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。
 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第154回目の今回は、中学生位から大人までを対象とする写真集です。

ヘスースとフランシスコ -エル・サルバドル内戦を生きぬいて-     長倉洋海/文・写真  福音館書店 2002年

 著者は世界中の紛争地、災害地を訪れる報道カメラマンです。
 しかし、意気込んで向かった紛争地で、歴史の決定的な瞬間や「世界をゆさぶる写真」は一 枚も撮れなかったそうです。
 気がつけば、紛争地や災害地にくらす普通の人々、 困難や貧しさのなかで生きている、特に子どもたちの写真をたくさん撮って、数 多くの写真集を発表しています。
 被写体に子どもが多いせいか、児童書に分類 されている本も多いのですが、写真から何を感じるかは読者次第、どの本も大人 にも見応え読み応えがあります。
 この本の舞台は中米の国エル・サルバドル、四国ほどの大きさですが人口密 度が高く、美味しいコーヒー豆がとれる国でした。
 1980年頃から激しい内戦で農村が荒れて大勢の人が死に、生き残った人々は土地を離れ、難民キャンプや国 外へ逃れました。
 1992年に国連の仲介で停戦、和平が実現しましたが、戦闘の 他にも、時々大地震が発生し、千人単位の死者が出る国でもあります。
 著者は、1982-2001年に7回にわたりエル・サルバドルを訪ね、サン・サルバドル近くの 難民キャンプに暮らす人々の暮らしを取材し続けました。
 ヘスースは難民キャンプの片隅で泣いていた3歳の女の子ですが、20年の間に無事成長、出産して 結婚式を挙げるのです。
 父親を政府軍に殺され、難民キャンプで育ったヘスースにとって、難民キャンプは故郷。
 夫となるフランシスコも父親を政府軍に殺され て、自身も反政府ゲリラの少年兵でした。
 この二人に、子ども時代からのことや夢などをじっくりとたずねた文章もあります。
 この写真集は、写真以外の文章も多く、長期にわたる人々の暮らしぶりの変化を見つめた読み応えのある本です。
 「米国が支援する政府軍と左翼ゲリラの内戦の背景には、国の富を独占する一握りの金持ちと多くの貧しい人々との格差があるといわれていた。(22頁)」と 言う国の状況は内戦終了後も大して変わらないうえ、米国の商業資本が浸透 してきて人々の暮らしがさらに苦しくなるという状況には胸が痛くなるようです。
         (NIMIC会員 根本百合)




 
 
 前号の本の紹介文に移る | 書籍の一覧に戻る |  次号の本の紹介文に移る

HOME  |  ABOUTUS  |  ACTIVITIES  |  VOLUNTEER  |  CONTACT  |LINKS

NPO法人 西東京市多文化共生センター     Copyright (C) 2011 NIMIC All Rights Reserved.