西東京市多文化共生センター

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   NIMIC通信 No.146(2018年11月号)
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┏ [11] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(140)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。
 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の 紹介を始めました。第140回目の今回は、南アフリカの作家が書いたヤング アダルト向けの作品です。

路上のストライカー   マイケル・ウィリアムズ作 さくまゆみこ訳 岩波書店

 ジンバブエのマシンゴ州の村グツに住むデオは、サッカーが大好きな少年 です。村にムガベ大統領の兵士が来て、支援物資の食料を奪い、住民全員を 虐殺した時、デオと自閉症の兄イノセントの二人だけが生き残ります。デオは 兄の面倒を見ながら南アフリカ目指して決死の逃避行にでます。難民たちに 国境を越えさせることを商売にしている人がいて、必死で逃げてくる難民を襲 う盗賊グマグマがいて、動物保護区を突っ切るとライオンやハイエナがいて・・・。 やっと南アフリカに入ると、なんとトマト農園主が雇ってくれました。天国かと思い きや、破格に安く働く外国からの難民は、南アフリカの労働者からの憎悪の的 なのでした。ある日、都会の外国人集住地区が襲撃されて大勢の人々が死 に・・・時は南アフリカのワールド・サッカーが開催される直前、ホームレス・ ワールドカップが開催され・・・。
 著者は、南アフリカのケープタウン生まれで、劇作家、小説家、そして ケープタウン・オペラの総合監督を務めています。「著者あとがき」によると、 この本自体はフィクションですが、この中に出てくる個々の出来事は実際の 事件を題材にしているそうです。知り合いのジンバブエから来た青年の一人は 父親をグマグマに殺され、もう一人はムガベ大統領の兵士に撃たれ・・・。外国 人住民が襲撃される場面は、2008年5月に実際に起きた事件で、焼き殺され た男性がいたそうです。ホームレス・ワールドカップも、2003年から世界持ち回 りで毎年開催されています。
 原作は2009年に南アフリカで出版され、2012年のアメリカ図書館協会ベスト・ フィクション・ブック(YA部門)に選ばれました。日本では2013年に翻訳出版さ れました。アフリカを舞台に、アフリカの作家が書き、アフリカで出版され、 アフリカで読まれている作品ですが、強烈な本です。ぜひお読みください。
      (NIMIC会員 根本百合)





 
 
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