西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.76(2012年9月)
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┏ [9] キーワードを読む
   「多文化共生」について理解を深めるために(71)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
第71回目の今回は、東西冷戦期にチェコスロバキアで生まれ育った絵本作家の自伝作品をご紹介します。

『かべ -鉄のカーテンのむこうに育って-』
ピーター・シス作 福本友美子訳 BL出版 2010年11月
絵本形式ですが、内容的には中学生位から大人までが対象だと思います。

 作者は1949年チェコスロバキアに生まれ、プラハで育ちました。
 大好きな絵を自由に描いていた少年が小学校へ上がる頃、共産主義国となっていたチェコスロバキアはソビエトの支配下に入ります。それから何がどう変わって行ったのか、子どもを洗脳することはいかにたやすいことかを、作者自身の少年期を通して描いていきます。そして思春期を迎えて何かがおかしいことに気づき、密かに入ってくるプレスリーやビートルズ等の音楽、ファッション、映画などに夢中になる頃、ドゥプチェクが共産党第一書記となり経済改革や言論の自由化などの政策を実施し、「プラハの春」の時代を迎えます。
 しかし、1968年8月ソビエトと東欧諸国の軍隊が侵攻して短い春は終わりを告げ、再び検閲・密告・疑心暗鬼の冬の世界へ逆戻りしました。1980年代半ばにソビエトでゴルバチョフ政権がペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)政策を実施し、ソビエトによる東欧諸国支配体制が終わるまでそれは続きました。
 1984年にアメリカへ移住、絵本作家となったピーター・シスの伝記です。
アメリカで育った子ども達に自分の子ども時代のことを説明するため、できるだけ正確に描いたのがこの本です。文章ではなかなか説明しにくいことを、非常にわかりやすく描いていて、さすが絵本作家だなと思います。
 2008年コールデコット・オナーブック賞を受賞した作品です。
(NIMIC会員 根本 百合)
 
 
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