西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.88(2013年10月号)
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┏ [7] キーワードを読む
       「多文化共生」について理解を深めるために(83)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第83回目の今回は、ナイジェリアの女性作家アディーチェの短編集をご紹介します。

 「明日は遠すぎて」
  チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著
 くぼたのぞみ訳 河出書房新社 2012年3月

 著者は1977年にナイジェリア南部で生まれ、ナイジェリア大学で学んだ後アメリカに留学。現在はナイジェリアとアメリカを往復しながら旺盛に活躍を続ける注目の若手作家で、多くの賞を受賞しています。
 作品は英語で書かれており、現在邦訳されている本は3冊で、本書の他に短編集『アメリカにいる、きみ』と長編『半分のぼった黄色い太陽』(ビアフラ戦争を舞台とした物語)です。
 本書には短編9編がおさめられていて、どれも20頁前後で読みやすかったです。
 現在のナイジェリアが抱える様々な問題を、びっくりするほど率直に描いていて、思わずひきこまれます。
 ナイジェリアは西アフリカのギニア湾に面した国で、1960年にイギリスから独立しました。
 主だった3民族の他に250以上の民族がおり、言語も500以上(公用語・高等教育は英語)、宗教は北部を中心にイスラム教、南部はキリスト教だそうです。
 果実、ココアやヤシなどが良く実る豊かな土地ですが、豊富な石油と鉱物資源に国の経済の大半が依存し、政治・経済はうまくいっていません。
 しかしナイジェリアの人口は1億6千万人で、全アフリカ人口の15パーセントをしめており、経済規模でも南アフリカ、エジプトにつぐアフリカの大国です。
 アフリカ諸国の文学は自国内で出版流通するのではなく、「アフリカ人作家が西欧言語で書き、西欧諸国で出版され、先進国の人間が読む」パターンが多いのですが、南アフリカとナイジェリアでは自国内での出版産業が成立し、文学市場が存在するそうです。
 ナイジェリア人の作家ウォーレ・ショインカが1986年アフリカで初めてノーベル文学賞を受賞しています(その後エジプト1名、南ア2名)。
 あとがきによると、アディーチェは来日して講演したことがあるそうで、「アフリカはこれまで長いあいだ外部からのシングルストーリーとして描かれることが多かったけれど、今はアフリカ人が自分たちの物語として書く時代だ。」と語ったそうです。
 強烈なパワーを感じさせますが、写真によると非常に美しい女性です。 
  (NIMIC会員 根本 百合)



 
 
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