西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.38(2009年6月)
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┏ [10] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(33)
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 NIMIC設立の理念の中で大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 33回目の今回ご紹介する本の舞台は、東欧諸国。
 大相撲の琴欧洲や把瑠都が生まれた国々について、私たちは一体何を知っているでしょうか?ヨーグルトだけの方、ぜひこの本を手にとって見てください。

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
   米原万里著 角川書店 2001年(角川文庫2006年)

 作者はロシア語の同時通訳や翻訳に活躍した方で、本がみな面白いと定評があります。 1950年東京に生まれ、家庭の都合で1959〜64年の5年間〔日本なら小4〜中2〕をプラハのソビエト学校で過ごしました。
 この本は、そこで出会った3人の友人(ギリシャ人のリッツア、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤースナ)のことと、30年後に再会を果たし語りあった彼女たちのその後の人生を描いており、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。
 当時プラハのソビエト学校は、各国の共産党幹部の子弟が集まる恵まれた環境でしたが、各々の家族と祖国との関係、祖国の共産党とソビエト連邦との関係など実に複雑な問題をかかえた存在でもありました。日本人マリが帰国して数年たち大学受験を考える頃、東欧では「プラハの春」、それに続くワルシャワ条約機構軍のチェコ占領事件が起きました。  その後に続くさまざまな出来事・・・ソビエト連邦の崩壊を同時通訳として著者は間近に見つめています。消息を尋ねあてた友人たちとの再会で語られる彼女たちの人生の転変は、あまりにも激しいものでした。
 私たち日本人の多くは東欧についての知識に乏しく、個々の国の判別すらあやふやな程度ではないでしょうか。これらの国々の民族・政治・経済・文化に非常に詳しい著者が、そこに暮らす人々の口から聞く実際の体験や現在の生活は、全く驚くばかりです。大陸で多民族が混在して生きるというのはこんなに緊張の多いものなのでしょうか。
 この本以降も、世界は日に日に変化しています。独自の切り口を持っていたこの著者から、もっともっと様々な話が聞きたかった。3年前に56歳で亡くなったことが本当に残念です。
   (NIMIC会員 根元 百合)



 
 
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