西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.61(2011年5月)
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┏ [7] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(56)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第56回目の今回は言語に関するドキュメンタリーの本です。
 昨年11月に読売新聞で作家のいしいしんじさんが紹介されていた本です。400ページと分厚く、けっして読みやすくはないのですが、作者の提示していく事実の積み重ねが胸に迫ってくる本です。

『「消えゆくことば」の地を訪ねて』マーク・エイヴリー著 木下哲夫訳
 白水社 2006年4月邦訳 ¥3600

 マティ・ケ語の話し手は三人のみ、母語で人と語り合うことのなくなった老人を訪ねるところから、この本は始まります。著者は詩人でジャーナリストであり、言語学の専門家ではありませんが、様々な言語に興味を持ち、世界各地を訪ね歩いて丁寧にルポルタージュして行きます。
 定かではありませんが約5〜6000とも言われる世界中で現在使われている言語の非常に多くが、消滅の危機に瀕しています。
 言語は常に変化していくものではありますが、あまりにも短期間で急激な変化が起きている。絶滅危惧種の生物の保護活動になぞらえながら、言語の多様性が失われるというのはどういうことか、単一言語の単一の価値観が蔓延することは社会にどんな影響がでるのだろうかと警鐘を鳴らしているのです。
 オーストラリアのアボリジニも北米大陸の先住民も、それぞれの土地で独自の言語を使い独自の生活文化を築いてきましたが、土地を奪うために追われ、後には保護の名のもとに移動させられ、従来の生活様式も言語も失いつつあります。イヌイットの世界も同じです。
 また経済がグローバル化する中で、親は子どもに共通言語である英語を習わせたがり、母語が希薄になっていくアジア・ヨーロッパの国々。
 なかには失われるだけではなく、復活する言語もあります。事情がより複雑なユダヤのイディッシュ、ヘブライ語、アイルランド語やウエールズ語、プロヴァンス語など。・・・中国語と日本語には全く触れていないのですが、思い当たることは多々あり、決して他所の出来事ではありません。
     (NIMIC会員 根本 百合)



 
 
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