西東京市多文化共生センター

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  NIMIC通信 No.56(2010年12月)
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もくじ
[1] 報告とお礼 第10回西東京市民まつり「西東京市民まつり10」出展
[2] お知らせ 「外国人のためのリレー専門家相談会」
[3] 講座お知らせ 「日本語ボランティア・フォロー講座
   〜楽しい地域日本語ボランティア活動のために〜」
[4] お知らせ 「NIMIC交流忘年会の日程が変更しました」
[5] 事務局より「NIMIC広報誌の名称が決定しました」
[6] 報告 「韓国語勉強会報告その2」
[7] 私の多文化体験から(1)
[8] お知らせ 「NIMICリーフレットの多言語版ができました」
[9] 事務局より「NIMIC会員証が新しくなりました」
[10] NIMIC理事会だより(12)
[11] 世界の国々・人々〜多文化に生きる(16)
[12] キーワードを読む 「多文化共生」について理解を深めるために(51)
[13] 2010年度・今後の事業予定

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┏ [1] 報告とお礼 第10回西東京市民まつり「西東京市民まつり10」出展
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 今年度の市民まつりに企画実行委員また、当日サポータとしてご協力を頂き有難うございました。
 今年度の市民まつりは10周年記念の節目となったためでしょうか、ここ数年の天候とは異なり両日とも小春日和に恵まれ、又晩秋の景色を楽しむことができました。
 参加者数は168,000人と実行委員会の当初の想定100,000人をはるかに超えた市民の参加がありました。
 2日間のNIMICブースでの参加人数は790人、サポータの延べ人数は午前が27人、午後が23人、二胡関連が14人となりました、10名による野外ステージでの二胡演奏の際も椅子席満席、周辺の芝生エリアも人また人でぎっしりの様子のなか、聴衆者の方々も演奏を満足して聴き入っているようでした。
 ブース内では例年以上の数の市民の方々が、サポータの皆さんと「多文化を知るワールドゲーム」を楽しんだり、NIMICや市内各日本語教室の紹介パネルを見たり、二胡体験をしたり、と「わいわいガヤガヤ楽しく」多文化展示を堪能している様子でした。(NIMIC理事 久保芳昭)
 
 以下は実行委員メンバーでサポータとしてもご協力頂いた方々の感想です。
*今年の新しいクイズは、西東京市登録外国人ベスト15の国名を中国語名で当てようとするものだったので、身近に感じられてとてもよかったと思います。
*NIMICの活動についても、説明を聞いて下さる方、また、説明を求める方が昨年よりも多かったように感じました。熱心に説明パネルをご覧になってゆく方も多く、市民まつりに間に合わせて用意しておいたNIMICリーフレットの多言語版(中国語、韓国語、英語)を配布でき、本当に良かったです。
*説明の最中に、直ぐ会員になりたいので会費をここで払いたいなどと言われる方もあり、うれしくもあたふたとしてしまいました。
*参加賞を設けたので、家族全員で挑戦していかれる方々が大変多かったです。また今年は、正解にたどり着こうと最後まで頑張る方が老若男女を問わず多かったと思います。
*楽しそうに参加し、笑顔で帰っていかれる方々がとても多く感じられ、私たちも楽しい時間を過ごすことができました。<岩野・徳丸>
*今年はじめてスタッフとして参加して、ホスト側として参加する楽しみを堪能しました。こんなに楽しいことを毎年やっていたんですね!来年は、どうぞ皆さんもご一緒に!<松田>

★昨年の「市民まつり出展」の様子はNIMICのHPでご覧いただけます。
→→→ http://www.nimic.jp/jpn/event/091114siminmaturi.html

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┏[2] お知らせ 「外国人のためのリレー専門家相談会」
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 弁護士、行政書士、社会保険労務士、臨床心理士、女性のためのカウンセラー、市の職員などと無料で相談ができます。
疑問に思っていることやわからないことなどを気軽に相談してください。

【相談できる内容】
国際結婚・離婚、事故、ビザ、在留資格、労働問題、税金、年金、健康保険、パートナーからの暴力(DV)、家族の問題、女性の悩み、子どもの成長についての不安や悩み、心の問題や学校生活の悩み…など。

日時:12月11日(土)午後1時3時30分
会場:南町スポーツ・文化交流センター「きらっと」
通訳言語:英語、中国語、韓国・朝鮮語、スペイン語、フランス語、タガログ語、ポルトガル語

※予約はいりません。会場に来た人から順番に相談できます。
※無料です。
※秘密は守ります。
※相談には、通訳ボランティアが付き添います。

<問合せ>西東京市生活文化スポーツ部文化振興課 
TEL 042-438-4040(日本語のみ)
FAX042-438-2021
主催 西東京市
共催 東京都国際交流委員会、東京外国人支援ネットワーク、
NPO法人西東京市多文化共生センター

都内全体のスケジュールは、東京都国際交流委員会のHPで確認できます。
 →→→ http://www.tokyo-icc.jp

Professional Consultation for Foreign Residents
Date & Time: Dec. 11. 2010 (Sat.) 13:00 -15:30
Place: Nishitokyo City, Minami-cho Sports & Culture Center
“Kiratto” 2ndFloor(Access: 3 minutes walk from the South Exit of
Tanashi Station,Seibu-Shinjuku line)
*Consultation with Experts, including Lawyers, Admnistrative
Scriveners, Certified Social Insurance Labor Consultants, Clinical
Psychologists, Feminist Counselors, and City Hall Officials.
*Please feel free to consult with experts about any problems you
have, and get all the information you need.
*On First-come- first-served basis. No Appointment Necessary.
*Strict Protection of Confidentiality
*If you request a volunteer interpreter, he/she is
with you at the consultation.
*Interpreters are available: English, Chinese,
Korean, Spanish, French, Tagalog,and Portuguese.

For further information: Nishitokyo City, Citizens & Cultural section
(Phone: 042-438-4040 *Japanese only)
See the website (Tokyo International Communication Committee)
 →→→ http://www.tokyo-icc.jp

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┏[3] 講座お知らせ 「日本語ボランティア・フォロー講座
        〜楽しい地域日本語ボランティア活動のために〜」
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 「楽しい地域日本語ボランティア活動のために」と題して、コミュニケーションを支える文法をベースに以下のテーマで2回連続講座を開催します。
日々の活動に生かせるヒントが得られる内容ですので、皆さんのご参加をお待ちしています。

日時:2011年1月15日(土)、29日(土)午前10時12時の全2回
対象:主に市内で日本語ボランティアとして活動中の方
場所:保谷駅前公民館 集会室 (保谷駅ステアビル5階)
講師:山形美保子さん(朝日カルチャーセンター日本語科講師、日本大学講師
杉並区ボランティア団体(LTC友の会)アドバイザー)
内容:第1回目:学習者に話してもらうためのひとつの工夫
第2回目:学習者にとってわかりやすい日本語を話すためのひとつの工夫
費用:NIMIC会員は無料/会員でない方2000円(2回分、当日お支払いください)

定員:40名 (先着順)
申込:12月15日(水)から受け付けます。お名前、ご所属、連絡先(電話番号・メールアドレス)を明記
申込先:NIMIC講座担当
    kouza@(このカッコ内を省略してお送りください)nimic.jpまで

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┏[4]お知らせ 「NIMIC交流忘年会の日程を変更しました」
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NIMIC通信11月号でお知らせいたしました「交流忘年会」の日程を諸般の事情により変更いたしました。ご予定頂いていた皆さまには、大変申し訳ありませんが、ご理解の上、ぜひご参加いただければと思います。日程変更したご案内は以下の通りです。
 
 今年も地元の留学生や外国人と会員の皆さんの交流忘年会を開催します。ゆっくり思い出を語ったり、新しい出会いの場として.ぜひご参加ください。

日時:12月17日(金)午後6時30分〜8時30分
会場:北京飯店(イングビル2階) 
参加人数:留学生約10名を含み30名程度
参加費:留学生・学生1,000円/NIMIC会員:大人2,000円・子ども500円
     ※会費は当日受付でお支払いください。
申込み:先着順で受け付けます。
     Eメール: event@(このカッコ内を省略してお送りください)nimic.jp 
または、FAX:042-461-0381
    (タイトルを「交流忘年会申込み」としてください)

★昨年の「NIMIC交流忘年会」の様子は、NIMICのHPでご覧いただけます。
   http://www.nimic.jp/jpn/event/081216bounenkai.html

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┏[5] 事務局より「NIMIC広報誌の名称が決定しました」
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 NIMICとして初の広報誌創刊については前号でお知らせしましたが、広報誌の名称について広報誌編集制作委員会での協議の結果、以下の通り決定いたしましたのでご報告します。

 メインタイトルに「多文化のわ」、サブタイトルとして「西東京市多文化共生センターだより」が入ります。
 「わ」は「和」(平和や人の和、また日本の意味としての和)の意味と、「輪」(人の輪、地域の輪)の両方の意味を掛けています。「和」は中心から外に広がっていくイメージで、「輪」は五輪マークのように輪同士が互いにつながっていくイメージです。
 現在編集作業が進んでおります。会員の皆様には1月末にはお手元に届く予定です。どうぞご期待ください。

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┏[6] 報告「韓国語勉強会報告その2」
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 5月17日に始まった韓国語教室ですが、前回(NIMIC通信6月号)でも報告したとおり、相変わらず毎回宿題どっさり、授業テンポも速く、厳しい教室です。
 内容はというと、ハングルの読み方から始まって、今はテキストを使って文章を読んでいます。
 韓国語は日本語と語句の並びが同じで英語やその他の言語に比べたら習得が簡単と聞いていましたが、実はハングル文字を覚えるのがまず一苦労で、語尾変化が複雑で、規則を覚えるのが大変だということがわかりました。
 ハングルは英語のアルファベットと同じ読みになっていますが、どの形が英語でいうそれかを一致させるまでが大変で、言い切りの形「食べる」から丁寧な言い方「食べます」という形に変えるのにもすべて同じ変化というわけではなく、単語によってや変化させる前の文字によって変化の仕方が変わって来ます。
 毎回習ったところを10回以上書くという宿題のおかげで、少しずつ書くのにもその難しい仕組みを覚えるのにも慣れてきているように思います。
 当初22人いた参加者ですが、今は11人です。
 こんな厳しい教室ですが、年末には先生と一緒に韓国料理で忘年会を計画していて、残った11人は結束も固く、これからも少数精鋭で和気あいあいとがんばっていきたいと思っています。(NIMIC会員 岩野英子)

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┏[7] わたしの多文化体験から(1)
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*このコーナーは会員の皆様ご自身の「多文化体験」を自由に綴っていただくコーナーです。さて、今月のエピソードは……。

第1回  「赤ちゃん事件」

夫、娘2人とのロンドンでの生活はふた昔も前のことです。
イギリスではどの家族もGPと呼ばれる総合診療の医師に登録します。ある日、我が家のGPが突然訪れてきました。
「貴女は1歳半の赤ちゃんに健康診断、予防接種を受けさせていませんね?」
「???うちには赤ちゃんはいませんが」
「家の中をみせてもらえますか?」
とても疑わしそうな目で赤ちゃん探しを始めました。
一方私は、家族写真、子ども達のパスポート、学校の成績表、母子手帳(もちろん日本語)まで取り出して『いない』ことの証明です。
結局納得されず、ネグレクトの疑いは晴れないまま帰っていきました。
数か月後、私の健康診断の時に書類の数字ミスだったことを知らされました。
数字に弱いところありのイギリスでした。
脱線しますが、メガバンクで入金金額を1桁間違えられたことがあります。
ご存知のように、店ではおつりを引き算でなく、足し算で出します。

それはそれとして、この赤ちゃん事件で、イギリスは子どもをとても大切にする国であることを実感しました。
(NIMIC会員 高橋美千代)

★事務局では会員のみなさまご自身の多文化体験を綴ったエッセイの募集をしています。どうぞふるってご応募ください!
★字数は300字程度で形式は自由です(エッセイ中の人名は匿名もしくはイニシャルでお願いします)。
★日常生活の中での外国の方々とのちょっとした交流から感じたこと、国内・国外での貴重な体験、とっておきのエピソードなど、特にテーマは定めません。気楽にお寄せください。
★いただいた原稿は順次NIMIC通信に掲載していく予定です。
次回締め切りは12月25日です。

応募方法
E-mail:info@(このカッコ内を省略してお送りください)nimic.jp
FAX:042-253-5350
事務所まで原稿をお持ちいただいても結構です。

*ご応募の際は送信タイトルを「体験エッセイ」としてください。
*なお、応募多数の場合、掲載されない場合もあります。
*また、編集の段階で語句の修正や文字数の調整などが発生する場合もあります。あらかじめご了承くださいますようお願いいたします。
*また、頂戴した原稿はNPO法人西東京市多文化共生センターのHPにも掲載されます。この点もご了承くださいますよう重ねてお願いいたします。

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┏ [8] お知らせ「NIMICリーフレットの多言語版ができました」
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通訳ボランティア、通訳窓口ボランティアの協力により、NIMICリーフレットの多言語版ができました。
中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、英語の4種類です。
センター窓口においてありますのでぜひご活用下さい。

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┏ [9] 事務局より「NIMIC会員証が新しくなりました」
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 ご存知のように2008年10月にNIMICはNPO法人となりましたが、それ以前からの会員の皆様には、そのまま旧名称の会員証をお使いいただいておりました。
 この度、それらの皆様の会員証をあらたに作成致しました。
 12月10日からセンター事務所でご入手いただけますので、教室などの折にお立ちより下さい。またお急ぎでない方には来年1月末発行の「NIMIC広報誌」と同封でご自宅へ送付させていただく予定です。どうぞよろしくお願い致します。
 なお、2008年10月以降の会員の方へは既に新会員証としてお渡し済みです。

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┏ [10] NIMIC理事会だより(12)
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11月度の理事会は25日、理事全員と文化振興課から越沼係長と水口主事のオブザーバー参加を得て開催されました。当センターの活動の活発化を反映して2時間半を超える熱心な意見交換がなされました。以下主な項目をお伝えします。
■主な報告事項
・日本語ボランテイア・フォロー講座の開催場所を田無地区に限らず、保谷地区へも拡大することとし、来年1月に2回実施。
・国立国語研究所の森研究員から当センターを通じ、日本語ボランティアを対象とした「外国人の話しことばの受け止め方」についての調査協力の依頼があり応諾した。
・子ども日本語教室・多言語活動等に関心の深い市議から、行政の問題点、市民活動との連携について市議会で質問したことについて報告のため、当センターに訪問あり、山辺副代表が対応した。
・本年4月10月センター経費の消費状況につき財務担当より説明し、今期の今後の経費支払についてのメンバーの参考とした。
・市民祭りの結果報告。当ブースへの立ち寄り者は790人を超えて大盛況であった。当ブースのサポーターの数も、会員中心に延べ50人、二胡体験の協力者も14人を超えた(本号、市民まつりの報告もご覧ください)。
・当センター初の広報誌の準備が着々と進行し1月末発行の運びとなった。
・その他、防災訓練報告、忘年会の日程、役割分担、ごみ処理業者との委託契約の報告等。
■主な審議事項
・来年度の相談員・事務職については、本年同様公募とすることとし、1月から準備を開始すること。
・センター利用者向けアンケートを実施することとし、用紙を制定した。
■文化振興課との打ち合わせ
・市側から多文化センターの来年度予算案の提示があった。総額は本年度とほぼ同額で、本年同様、総予算額の50パーセント以上を人件費に費すこと。
これは東京都の失業対策予算を来年度もセンター予算のファンドとすることから来る制約である。
・通訳派遣業務を上記予算から切り離して計上し、拡充を図ること。
・2月14日(月)の市会議員、市職員、市民との多文化共生の講演会の内容の詰め。佐々木代表と市側の打ち合わせ日程を早急に決める。
・多文化共生センターの広報用リーフレット(外注)が12月初旬完成すること。
・2011年度西東京市のリビングガイド改訂版発行につき、在住外国人、および通訳ボランティア等から意見集約中。
・来年秋の日本語スピーチコンテストの準備の進行状況の確認。ワーキングティームのミーティングを、12月14日ではなく1月27日に開催すること。
■その他
・理事会便りは今回をもって最終回とすること。
   (NIMIC理事  斎藤 勝)
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【通訳ボランティア対応】
 2010年4月1日から、センターが開いている時間帯は以下の多言語対応をしています。
英語   月・水・木・金曜日、第1火曜日(午前10時正午)
中国語  月・金曜日

12月の予定(上記以外)
台湾語 3日 午後2時〜4時、10日 午後1時 3時
韓国語は担当者の都合で年内はお休みです。
また、17日午後と24日全日で中国語がお休みです。

英語、中国語、台湾語でのサポートが必要な方がいらっしゃいましたら、ぜひ、この情報を提供してください。 

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┏[11] 世界の国々・人々 〜多文化に生きる(16)
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 「世界の国々・人々」と題したこのコーナーでは、ある国にスポットをあて、その国の文化・人々との交流をいろいろな形でお届けしていきます。
 現在、オーストラリア・国立マッコーリー大学 元日本学科長チャオ・埴原三鈴先生によるエッセイを連載しています。
 
多文化に生きる 〜オーストラリア〜 (16)

イギリス貴族と結婚したオーストラリア女性がいる。ロンドン近郊で宮殿のような邸宅に暮らす。初めての訪問客に邸内を案内するとき、彼女は壁に並ぶ肖像画を説明する。
「これは主人の祖先たちです。」
 宮廷服や、ガーター勲章のサッシュが目立つ、いずれも煌びやかな肖像画ばかりである。
「そして、こちらが私の祖先。」
 彼女に促されて客が眼にするのは、もう一方の壁にかかる巨大なカンガルーの絵画。彼女は悪戯っぽく微笑む。イギリスの特権階級出身ではない、生粋のオーストラリア人である、ということを即座に客に理解させる。客の期待を逆手にとった、彼女のプライドでもある。

オーストラリア人のアイデンティティとは何であろうか。世界各国から来てこの地を祖国と決めた人々が、オーストラリア人として分かち合える共通項とは何であろうか。近代オーストラリアの歴史はまだ200年余。アボリジニー民族はこの地に4万年の歴史を持つ。入学式、卒業式など公式の式典では開幕と同時にアボリジニー民族に対する敬意を表すことが今では通例になっている。しかしオーストラリアで生まれ育つ若い世代はアボリジニー文化の伝統は尊ぶが、自分たちのアイデンティティとはなっていない。彼等が共通して自分達のルーツとするのは、むしろカンガルー、コアラを含むユニークなオーストラリアの自然環境であり、子供のころから聴いて育った開拓時代の話である。広大な自然、そこで生活を築こうとする苦労と喜び、これはアボリジニーの人々も含めて皆が共通して分かち合える歴史である。

娘たちが大学生の頃、クリスマス・お正月の休暇をアメリカで過ごしたことがある。アメリカは我々夫婦にとって留学生活をした親しい国である。ニュー・イヤーズ・イヴはグランド・キャニオンであった。陽が落ちた峡谷を見下ろす山小屋風のレストランが新年を迎えるパーティの場になった。アメリカ人の他各国の旅行者でにぎやかであった。

夜中の12時が近づき雰囲気が盛り上がってきた。そのとき、私たち一家の席から少し離れた一角から元気な歌声があがった。ワルチング・マチルダの歌。開拓期のオーストラリア、殆ど未踏のアウト・バック、そこを放浪する男の話。この歌はオーストラリア人なら知らない人はない。何年か前、新しい国歌を選定するとき、ワルチング・マチルダを推した人は多かった。オーストラリア独特のスラングをふんだんに含むこの歌は「威厳に欠ける」と国歌にはならなかったが、歌の人気は今も変わらない。一節を歌い終えて若者たちは大声で呼びかけた。
「他にオージー(オーストラリア人の愛称)はいないか!」
 待ってました、とばかり立ち上がったのはわが娘たちであった。すぐさま彼等とG’DAYの挨拶をかわし、楽しそうにワルチング・マチルダの合唱に加わった。その歌声は、そこに集う世界各国の人々の中で高らかに宣言するオーストラリアのアイデンティティであった。ああ、わが娘たちもオーストラリア人であった。主人と思わず顔を見合わせて笑った。
(チャオ・埴原三鈴〈Misuzu Hanihara Chow〉)

★これまでに掲載したエッセイのバックナンバーは、NIMICのHPでご覧いただけます。
http://www.nimic.jp/jpn/magazine/essay_1.html

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┏ [12] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(51)
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NIMIC設立の理念の中で大きなウェートを占める「多文化共生」。
この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
第51回目の今回は日本の文化から、日本語の世界を舞台にした絵本を1冊ご紹介します。

『ぜつぼうの濁点』 原田宗典・作 柚木沙弥郎・絵 
     教育画劇 2006年7月 ¥1300

 「昔あるところに言葉の世界がありまして その真ん中におだやかなひらがなの国がありました。」そのひらがなの国に椿事が生じて……大騒ぎとなりますが、はてさていかなることになりますやら……。」
なんともけなげな濁点の、せつなく胸に迫る物語です。
 この本は、作者の一般書である『ゆめうつつ草紙』(幻冬舎文庫)の中の一話を、一冊の絵本にしたものです。児童の絵本の棚にありますが、この通り昔調で言葉も難しく、振り仮名付きですが漢字も使用しています。
小学校高学年から大人までが対象でしょうが、なかでも日本語学習にかかわる私たちの気持ちを揺り動かす絵本です。ぜひ手に取って、しばし日本語の世界をお楽しみください。
 (NIMIC会員 根本百合)

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┏ [13] 2010年度・今後の事業予定
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※詳細は随時お知らせします。
2010年
12月11日    外国人のためのリレー専門家相談会
12月17日    NIMIC交流忘年会
2011年
1月15日、29日 「日本語ボランティア・フォロー講座」
     —コミュニケーションを支える日本語文法
3月19日    子ども対象「英語で楽しく」

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 今回のNIMIC通信は、いかがでしたでしょうか。
みなさまのご意見、ご感想をお待ちしております。
メールはこちら→→→ info@(このカッコ内を省略してお送りください)nimic.jp
★NIMIC通信のバックナンバーはこちらから。
http://www.nimic.jp/jpn/magazine/back_number.html
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発行・編集
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住所 〒202‐0023 西東京市新町1-12-3
FAX 0422‐53‐5350
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