西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.72(2012年5月)
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┏ [11] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(67)
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 NIMIC設立の理念のなかで大きなウェートを占める「多文化共生」。 この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 第67回目の今回は、ケニアの首都ナイロビのスラムを舞台にした物語です。

『幸せの器』 おぎぜんた作 坂田泉絵 偕成社 2010年11月

 農村で育った少年アイザックは、病気で父母が死にみなしごとなりました。
 子どもたちはバラバラに親類縁者に引き取られ、アイザックはナイロビのスラムにやってきます。かろうじて食事だけはもらえるが学校にも通えない生活の中で、アイザックは先輩サミーについてスカベンジャー(ゴミ拾い)となり、生き延びていきます。スラムの生活が臭いや手触りまで感じられるほど伝わってくる本です。
 作者はケニア在住の日本人で、これまでに農業技術者として、ザンビア、ソマリア、ウガンダ、スリランカ、ケニヤなどで活動してきました。そのかたわら、ナイロビのスラムでストリートチルドレンの更生と技術訓練を通して自立の手助けをするというNPOのスラムプロジェクトに参加し、多くの子どもたちに出会い、この本が生まれたそうです。フィクションで読みやすいのですが、私は限りなくノンフィクションに近い本だと感じました。
挿絵はケニアの大学で建築学を指導した経験のある方で、すてきなケニアスケッチでもあります。
 この本を紹介しようと考えていたある日、新聞記事に目が留まりました。
「外国資本が流入して都市の再開発が行われることになり、突然ナイロビのスラムが撤去され、大勢の人々が生活の場を失い途方にくれている。」というものでした。この本の舞台が消え失せてしまったらしいのです。この本を読んでいた私は、それ以来ずっとその後のことが気にかかっています。
   (NIMIC会員 根本百合)

 
 
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